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デイリータイムズ特集記事
病者用の特保を臨床試験で格付け狭間 今、「生体機能補完講座」では何に取り組んでいるのですか。伊藤 一般の方にも関心が高い「食」と「健康」という切り口からまずは食品を対象に取り組みを始めています。食品には、栄養と味覚、そして生理活性を高めるという3つの機能があります。3番目の生理活性を高める機能には老化の防止などがあり、これに特化したものが機能性食品、今はサプリメントという言い方をしています。この中で、動物実験を中心とした基礎的なデータの裏づけがあり、安全性や品質管理の面で問題がないものを選択して、きちんとした臨床試験を行い、エビデンス(信ずるべき根拠)を追求していきたいと思っています。 講座で取り組もうとしているのは、病気の予備軍を含めて健康な人を対象としたサプリメントです。サプリメントの中でも信頼性の高いものがあります。臨床試験で格付けして、それをさらに引き上げて行政に特定保健用食品として認めていただくことも考えています。さらに、それを発展させて病者用に引き上げることも今後は可能性としてはあると思います。 狭間 一口にサプリメントといっても中には怪しいものもあります。安全性や有効性が担保されたサプリメントを対象に臨床試験を行うことが第一歩ということですね。 伊藤 そうです。それから予防医学的観点からの取り組みも考えています。今、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が増えています。これは体に内臓脂肪が蓄積していて、それに高血糖や高血圧、高脂血症のうち二つを満たすものです。人間ドックに入って検査をするとよく脂肪肝が見つかります。このような方は、おそらく将来的にメタボリックシンドロームになる可能性があります。 その中にナッシュという病態があります。これは欧米型の非ウイルス性、非アルコール性のもので、今後はウイルス性肝炎が減り代謝異常からくる肝硬変や肝ガンが増えてくると思われます。そういう人に対して補完の手段を使って介入試験をし、それでどれだけ改善するか。そういう事例を示すことによって、人間ドックの中で予備軍的な人に警鐘を発することができます。そういう臨床試験を組もうかと思っています。 生活習慣病と腸内細菌の関係に注目狭間 7月から大阪大学医学部附属病院で補完医療外来を始められたのも、そういう狙いがあるのですね。伊藤 この補完医療外来を受け皿にして大阪市内のいくつかの人間ドックの施設に協力をしていただき、一定の基準を満たした人に介入試験をしたい。それによって短期間にどれだけ指標が改善するかを見たい。これは肝機能などいろんな指標が使えます。そういうデータを出して蓄積したい。 狭間 こうした取り組みのほかに視野に入れられていることは。 伊藤 腸内細菌には、非常に興味をもっています。腸内細菌をバイオマーカー(生体の情報を数値化・定量化する指標)にして腸内細菌の評価をしたい。最近、生活習慣病は腸内細菌とも密接に関係するといわれ、その腸内細菌をいかに正確に評価し解析するかが今まで十分にできていません。というのは腸内細菌のほとんどが嫌気性菌(酸素を嫌う菌)だからです。嫌気性菌というのは空気に触れると死んでしまう。今までは、細菌を培養して検出していたのですが、培養で検出できる菌は限られているので、それをDNAのレベルで検出することを理化学研究所の辨野先生と一緒に取り組もうと。どのような疾患を対象にするかはこれからの検討課題です。 今、視野に入れているのは炎症性腸疾患といわれる病態で、クローン病などの難治性の疾患です。これは腸管の免疫系の異常が引き金で発症します。腸内細菌との相互関係が重要で、それを引き起こすのは何らかの食事の中の抗原です。そこにメスを入れて何とかしようと。これはアレルギー疾患も関係してきます。腸内細菌を正確に解析できる手段が出てきたので、そういった解析もできるのではないかと思います。これも消化管がらみの話で、単に消化管疾患だけではなく、いろんなところに応用できると。 狭間 今の話では補完医療外来でモニターすればデータができて、エビデンスにつながってきます。そうすれば医学学会での発表や論文の投稿も可能となり、一般の医療人に向けても大きな情報提供ができます。この講座は一般の方だけでなく、医療従事者の方にも、情報を発信していくということですね。 伊藤 出てきたエビデンスについてはネガティブであれ、ポジティブであれ公表していかないといけないと思います。それでいろんな方の診療に役立てればいい。広報活動も積極的にやっていきたい。 補完医療で鍼灸の臨床試験も狭間 現状の取り組みから今後、中期的に考えると補完医療や統合医療への方向が出てくると思われますか。伊藤 東洋医学の中にも多くのエビデンスがありますが、現状、それを西洋医学のドクターとコラボレートできていません。我が国では、古くから行われている鍼灸はその代表的なものとして、知られています。だから鍼灸の先生に来ていただいて補完医療の中で臨床試験を組んでいく予定です。鍼灸に関しては腰痛とか肩痛に対する一般的な鍼ではなく、それ以外の、例えば化学療法をしている間の有害事象を下げるとか、アトピーや喘息などのアレルギー疾患や慢性呼吸器疾患も対象になります。泌尿器の領域では排尿障害、また糖尿病の末梢神経障害などの臨床試験も組んでいきたい。われわれは専門家ではありませんので、明治鍼灸大学の鍼灸の専門家に来ていただいております。 狭間 普通に受診できるのですか。 伊藤 院内からの紹介はもちろん、外から受診される場合はインターネットのホームページにも出ていますから診察予約がとれます。相談的な窓口と、「こういう臨床試験があります。どうですか」という窓口にも位置づけています。とくにガン患者さんは、藁にもすがりたいという方が多く「こういうものを飲んでいいのでしょうか」という相談がかなり多い。残念なのは、それに対する100パーセントの回答ができず限界はあります。きちんとしたデータがあるものはわれわれも把握しているので「それならいいでしょう」というアドバイスはできます。 狭間 社会保険や国民健康保険で受診できるのですか。 伊藤 相談の窓口は自由診療(有料:初回30分15,000円、2回目以降は30分10,000円)ですが、臨床試験では診療報酬は発生しません。将来、エビデンスのあるものについては行政と相談の上自由診療でやっていきたい。講座は病院長直轄ですから、すべての診療科が臨床試験を組みたいということであれば全面的に協力してくれます。 <2006年9月号 ・デイリータイムズ記事抜粋> |
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